一日の終わりに、父の背中をかいてねぎらう母。写真提供:(C)2018「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会、(C)2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作・配給委員会
映像ディレクターで映画監督の信友直子さんには、認知症になった90代のお母さんがいます。その介護を行う90代のお父さんとの記録は、2016年にテレビ番組で、18年には映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』、22年3月には続編『ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえりお母さん〜』として公開。「認知症」という重いテーマを描く一方、夫婦としての幸福さに憧れも抱かせる内容が反響を呼びました。その信友さん、認知症になったお母さんを前に、当初は長く暗いトンネルを歩いているように感じていたそうですが、ある「気づき」のおかげで前向きになれたそうで――。

『この世界の片隅に』の片渕須直監督とお会いして

実家のある呉市を舞台にしたアニメ映画『この世界の片隅に』の片渕須直監督にお会いした時のことです。

「(主人公の)すずさんと周作さんが今も元気なら、ご両親のようになっているのかなと思います」

そう言っていただいて感激しました。1920(大正9)年生まれの父は周作さんより少し年上、1929(昭和4)年生まれの母はすずさんより少し年下なのです。

両親は当時としては晩婚だったので、すずさん夫婦のように戦争を一緒に乗り越えたわけではありません。それでも、それぞれ過酷な青春時代を送ったようです。

『ぼけますから、よろしくお願いします。おかえりお母さん』(著:信友直子/新潮社)