介護で行き詰まった時は、カメラを構えたつもりで、ヒキで見る

母の行動だけを見て「何でこんなになってしまったんだろう」と思うと悲しくなりますが、少し引いて見ると「ぼけたおばあさんと耳の遠いおじいさんのかみ合わないやりとり」は、とぼけた味があってほほ笑ましくも感じられるのです。

そして「ヒキ」で見るには、カメラを回していたことがとても助けになったと思います。自然と視点が客観的になるからです。

娘には心が折れるだけの母の振る舞いも、カメラを回していれば「これって衝撃映像かも!」とおもしろがることもできるのです。

みなさんにも、介護で行き詰まった時は、カメラを構えたつもりで、ヒキで見ることをお勧めします。

「イラッとしている自分も含めてなんだか笑っちゃうシーンだな」。そう思えたらしめたもの。少し楽になれるはずです。

※本稿は、『ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえりお母さん』(新潮社)の一部を再編集したものです。


ぼけますから、よろしくお願いします。おかえりお母さん』(著:信友直子/新潮社)

母が認知症診断を受けて4年半、介護サービス利用が始まってほっとしたのも束の間、東京で働く著者に広島で暮らす父から電話が。「おっ母がおかしい」。救急搬送され、そのまま脳梗塞で入院した妻に、98歳になった父は変わらぬ愛情を注ぐが……。遠距離介護を続ける娘が時に戸惑い、時に胸を打たれながら見届けた夫婦の絆。老々介護のリアルを娘の視点で綴った話題作、待望の続編!