認知症専門医の今井先生と。映画公開時に駆けつけてくれた。写真提供:(C)2018「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会、(C)2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作・配給委員会

 

映像ディレクターで映画監督の信友直子さんには、認知症になった90代のお母さんがいます。その介護を行う90代のお父さんとの記録は、2016年にテレビ番組で、18年には映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』、22年3月には続編『ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえりお母さん〜』として公開。「認知症」という重いテーマを描く一方、夫婦としての幸福さに憧れも抱かせる内容が反響を呼びました。その信友さん、認知症専門病院の先生からもらったアドバイスに心の霧が晴れていくような思いをしたそうで――。

「介護はプロとシェアしなさい」

ヘルパーさんの派遣をお願いしたばかりの頃は、私にも葛藤がありました。

一番申し訳なく思ったのは母のお漏らし。いくら仕事とはいえ、他人であるヘルパーさんに始末してもらっていいのだろうか。やはり身内がすべきなのではないか……。

娘がいるのに、他人に汚れ物を押しつけてしまう罪悪感が、どうしても拭えなかったのです。

もやもやした思いを抱えたまま、私の撮りためた映像と、呉まで来てくれたカメラマン・河合くんの撮りおろしで構成したテレビ番組「Mr.サンデー〜娘が撮った母の認知症」の放送を迎えました。

この時にスタジオでご一緒したのが、認知症専門病院「和光病院」(埼玉県)の院長、今井幸充(ゆきみち)先生でした。先生からいただいたアドバイスが忘れられません。

今井先生は、

「信友さんはまだヘルパーさんに遠慮がありそうだね」

とズバリ指摘。そして、その後の母との向き合い方の指針となった大切な言葉をくださったのです。

「介護はプロとシェアしなさい」

シェア=役割分担です。プロとうまく役割分担して介護してゆくことが大事だというのです。