「別人」になっていく姿に揺れた心

「今、信友さんがやらなきゃいけないのは、お母さんを心から愛してあげることだよ」

2018年夏、東京に帰る私を玄関で見送ってくれた両親。母の元気な姿はこれが最後となった。写真提供:(C)2018「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会、(C)2022「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」製作・配給委員会

 

認知症専門医の今井先生にかけられたこの言葉は、実はぐさりと胸に刺さっていました。今まではぐらかしてきた自分の気持ちに向き合う時が来た、と思ったからです。

はたして私は、認知症になった母を今までのように愛せているのだろうか?

大好きだった母がどんどん別人になってゆく。おもらししても知らん顔。指摘するととぼけ、そのうち逆ギレして、

「私はおらん方がええんじゃろ!」

こんな姿を見せられて、心が揺れないはずはありません。

悲しさ。情けなさ。絶望感。認知症の肉親を介護している人なら、誰もが思い当たる葛藤ではないでしょうか。