ご近所の温かさに救われて

「Mr.サンデー」の中で母の認知症を公にしたのは2016年9月でした。それまでも隠しているつもりはなかったのですが、ご近所にも言っていませんでした。今となれば、自分の中に「恥だ」と思う気持ちがあったと認めざるを得ません。

放送後は緊張しました。

全国放送なので近所の人も見たはず。どう思われただろう。

でも、そんな不安はすぐに払拭されました。早速、向かいのおばさんに叱られたのです。

「あんた、なんで教えてくれんかったんね? 水くさい。知っとったらあんたがおらん間、お母さんのこと見てあげられたのに」

中にはこう言ってくれた人もいました。

「お母さん、おかしいなとは思いよったんよ。でもあんたが何も言わんし、内緒にしとるんか思うて声が掛けられんかった。これからは気を遣わずに付き合えるけん、ホッとしたわ」

そう、近所の人たちは本当にやさしかったのです。人生100年時代と言われ、誰が認知症になってもおかしくない今、「あそこのおばあさんはぼけた」と陰口をたたく人はいないのです。誰もが人ごとでなく自分事として認知症を捉えているから、母のことも親身になってくれる。そう実感しました。もっと早くご近所に話して、頼ればよかったな。

それからは、母が外に出ていると誰かが手を引いて連れ帰ってくれたり、父が買い物に行くとお店の人が「無理しんさんなよ」とねぎらってくれたり。うちはご近所の温かさにずいぶん救われました。

ありがたいなあ、このご恩をどうやって返そう。

思いを巡らすうち、気づきました。私もほかのお年寄りに同じことをすればいいんだと。「お互いさま」の気持ちで。

つらいときは周りの人に頼る勇気を持つ。そして自分が頼られたときには、喜んで応えてあげられるやさしさと想像力を持つ。母の認知症から、また一つ大切なことを教わった気がしました。