「何のために生きているのか」という質問に対する寅さんの答え

実は寅さんには、心に刺さる名言がたくさんあります。数え上げれば、それこそキリがありませんが、やはり一番は次にあげる甥の満男の質問への答えでしょう。

中村さんのお宅を暖めるのは、薪ストーブ(写真:本社写真部)

「人間は何のために生きてんのかな……」と若い満男が聞きます。これを本格的に考えるのは哲学者のお仕事ですけれど、誰もが時々考えることも確かです。

ちょっと哲学者を気取って考えてみるくらいならよいのですが、生きるのが辛くなってそんなことばかり考えるようになったら大ごとです。とくに若い人が考え込んだ結果、自分は生きている価値がないのではないかと思ったら大変です。

これこそ周りにいる年配者の出番ですけれど、長く生きてきたからといって答えがわかるものでもありません。ここで寅さん頼みです。

難しいことを聞くなよと断った後で、「ああ生まれてきてよかったなって思うことが何べんかあるんじゃない、ね。そのために人間生きてんのじゃねぇのか。お前にもそういう時が来るよ、うん。まあ、がんばれ」

そうなんです。何べんかでよいのです。この年になっても、あーあと溜息をつくことばかりの日々ですけれど、人間として生きることができるのはやっぱりすばらしいことです。嬉しかったこともあれこれ思い出します。