年をとってからのよい生き方は若い人に優しい目を向けること
こう書いて、具体的なことを思い浮かべてみましたら、人生の節目のような事柄は出て来ず、自分でもおかしくなるようなことが次々現れてきました。寅さんに合わせて思い切り日常の例をあげますね。
「和菓子には季節に合わせて美しくつくった上等なものがあるけれど、一番好きなのはなあにと聞かれたら答えは豆大福なの」。そんなことを言ったことすら忘れていましたのに、次に来る時のお土産に豆大福を持ってきてくれた友達がいます。
この時確かに、生きててよかったと思いました。生きるって小さなことの積み重ねだとつくづく思います。
寅さんと満男のやりとりを見ていると、満男あっての寅さんじゃないかと思えます。
若い人が自分の昔を思い出させるように、恋に悩み、将来に不安を感じている姿を見せるので、愛しくて助けたくなる。この関係が、寅さんの魅力をつくっているように思います。
年をとってからのよい生き方は若い人に優しい目を向けることだと、寅さんは教えてくれます。
「困ったことがあったらな、風に向かって俺の名前を呼べ。おじさん、どっからでも飛んできてやるから」。
正直、笑ってしまいます。フーテンの寅で、あまり頼りになるおじさんでないことは誰にもわかっていますし、本人だって知っているのですが、この言葉、何べん聞いてもいいなと思います。若い人のそばにはいつもこんな大人がいる社会でありたいですね。