この一家には、親族のトラブルがありました。Cが存命中にある問題を起こし、BとDに大きな迷惑がかかっただけではなく、経済的にも莫大な被害を与えました。結果的にBの配偶者と、Dが経済的な損失を被ることとなり、それが原因でBとDの仲も断絶。その後Cは亡くなりました。とはいえ、Cの子どもたち(E・F)は問題が起きた時まだ幼なかったので親が起こした問題を伝えないでおこう、と親類で意見が一致していました。

ところが、BとDが仲が悪かった上に、ともに80歳を超え、認知症の症状が出始めていることが話を複雑にしました。どちらも認知症はごく軽度というものの、Cのトラブルをどちらも記憶をすり替えたり、誤解したりしたまま自分の子どもたちに話し、子どももそれを鵜呑みにし、それぞれの子どもまで巻き込んだトラブルに発展したのです。

親の問題を知らないCの子どものEは、法律上は代襲相続人として当然の権利があると主張。また、「今ごろこんなことを言うなら、自分が成人したときに親の借金を言ってくれれば良かった。もう時効だし、言わないほうが悪い、もらえる物はもらう」と言って、BとDを激怒させました。

Bから依頼された弁護士の交渉の結果、「もはや顔を合わせたくない」という状態の親族が話し合いのテーブルにつくまで約2年の月日が流れました。さらに2年が経過して、代襲相続人を含めた相続人全員から同意を得て、登記を変更し、土地が売却され、法定相続分を全員が受け取ることで決着を見ました。

 

親族を動かした弁護士の言葉

それでも解決に至ったのは、弁護士の粘り強い交渉があったからです。その際、弁護士が優しく、丁寧に繰返し伝えたフレーズが相続人たちの心を動かすことになったのです。それが、「この状態であなた方に万が一のことがあれば、法律ではお子さまたちがこの問題を引き継いでもらうことになるんですよ」というものでした。

それぞれの感情が渦巻いていた相続人ですが、さすがにその大変さを実感しているだけに、自分たちの世代で解決しようと思ったようでした。