特に60歳を過ぎたら「仲がよくて当然、理解してくれて当然といった〈家族の幻想〉を捨てるべき」と弘兼さんは言いますが――。(写真提供:PhotoAC)
『課長島耕作』シリーズや『黄昏流星群』などの作品で知られる漫画家・弘兼憲史さん。70代となった弘兼さんは「60歳を過ぎたら持ち物や人間関係を整理し、より身軽に人生を楽しもう」とその著書を通じて提案しています。その意味で「仲がよくて当然」「理解してくれて当然」といった〈家族の幻想〉を捨てるべきとのことですが――。

身辺整理の難敵、「家族」

さて、60歳から手ぶらに生きるための僕の提案として、今回は「家族」という難敵に挑みたいと思います。

言うまでもなく、家族というのは多くの人にとっていちばん身近な存在のはずです。時には「家族なんて大嫌い!」なんて人もいますが、そんな人はやはり稀(まれ)ですし、そんなことを言えば、よほど人に言えない事情があるのだろう、と邪推されてしまいます。

ひとつ屋根の下に暮らしていれば、精神的にだけでなく、肉体的にも家族を身近に感じている、というのがごく一般的な人の感覚でしょう。

ただ、それほど身近だからこそ、わずらわしい面を持ち合わせているのが、また家族という存在です。