『課長島耕作』シリーズや『黄昏流星群』などの作品で知られる漫画家・弘兼憲史さん。現在70代の弘兼さんは「60歳を過ぎたら持ち物や人間関係を整理し、より身軽に人生を楽しもう」とその著書を通じて提案しています。その意味で「年を取ったら『孤独力』を身につけたほうがいい」とのことですが――。
年を取れば頑固になってしまうもの
私はいろいろな場面で「年を取ったら友人を減らし、孤独を楽しもう」と提案してきました。しかし、それは決して「わがままに生きよう」という意味ではありません。
特に「自分のペースで生きる」などと言うと、好き勝手に生きてもいいようなイメージを持ってしまいそうですが、もちろん事はそう単純ではありません。
そもそも人間というのは、年を取ってくると自然と頑固になっていきます。あなたにも思い当たる節があるでしょう?
それまでの人生経験で得た、自分なりの信念やルール、常識や思考法のようなものがありますから、他人の言うこと、特に若い人の言うことが耳に入ってこなくなるのです。
「年を取ってから医者の言うことが素直に聞けなくなってきた」と言う知人がいました。病院に行くと医師のほとんどが年下のため、「お前みたいな若造に俺の身体のことが本当にわかるのか?」と思ってしまうのだそうです。
もちろん、その知人も医学の専門知識は医師のほうが上なことは重々承知しています。ただ、「俺との身体のつき合いは俺のほうが長いのだから、俺の身体に関しては、お前より詳しい。今日初めて診たお前に何がわかるのだ」などという感情が沸き起こってしまうのだそうです。
最終的には医師の言うことを聞くそうですから、僕は「じゃあ最初から素直に聞けばいいのに」と思うわけですが、こういうのもひとつの頑固さの表れなのだと思います。