孤独力をつけよう
もしかしたら最近流行りの田舎暮らしも方法としてはあるのかもしれませんが、僕も山口県の岩国市という(東京から見れば)田舎の出身ですから、田舎特有の排他的な雰囲気も知っているつもりです。
過疎化を防ぐために住まいや仕事を安く提供して、移住者を募つのっている自治体も最近は増えているようですが、特に都会暮らしが長い人ほど田舎に溶けこむのは難しいのではないでしょうか。
テレビなどで観る楽しそうな生活を鵜呑みにして、田舎暮らしなどを始めると「こんなはずじゃなかった!」と、きっと後悔することになると思います。現実はドラマや映画の世界ではありませんから、都会の人は冷たくて、田舎の人は心があたたかいというほど単純ではありません。
これは若干の偏見も含むかもしれませんが、田舎の人ほど、他人の生活に口を挟みたがります。それを親切と感じられているうちはいいですが、普通はやはり「おせっかい」に変わってしまうのではないでしょうか。
改めて言うまでもありませんが、「孤独」というのは、単純にひとりの状態を指す言葉ではありません。僕のように客がたくさんいるファミレスにいても孤独を感じることができる。
僕はこれを「孤独力」と呼んでいます。どんな状況でも望んで孤独になる力のことです。
もし、友人を減らすことにまだ抵抗があるなら、「孤独力をつけよう」と思ってみてはどうでしょう。
時々、みんなで飲んでいるのに急にひとりでスマホを取り出し、平気な顔でイヤホンで音楽を聴き始めるような変わったやつもいますが、あれも孤独力かもしれません。特に迷惑をかけているわけでもないので、みんな呆れながらも不思議と憎めない。
そうなればシメたものです。
※本稿は、『増補版-弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
『増補版-弘兼流 60歳からの手ぶら人生』(著:
弘兼憲史/中央公論新社)
定年後は持ち物や人間関係を整理し、身軽に人生を楽しもう!『課長島耕作』などで知られる漫画家が60歳からの理想の生き方をつづったベストセラーの増補版。「常識」という棚にしまったすべてのものを一度おろして、ひとつひとつ吟味してみませんか。そうすれば、きっとこれからの人生に必要なものと必要でないものが見えてくるはずです(はじめにより)。