5 近代の変遷

平成7年の「阪神・淡路大震災」で倒壊した極楽寺の庫裏(くり)の下から、秀吉が湯治のために造らせた自分専用の「湯山(ゆのやま)御殿」の遺構の一部が発見された。これを契機に神戸市は平成11年に出土品を保存・公開し、秀吉がこよなく愛した有馬温泉の歴史と文化を紹介する「神戸市立太閤の湯殿館」をオープンした。秀吉はこの「湯山御殿」に入浴することなくこの世を去ったが、石造りの露天風呂や蒸し風呂の遺構が出土したままの状態で展示されている。

「神戸市立太閤の湯殿館」に展示されている太閤秀吉専用の石の露天風呂 

有馬温泉には塩分と鉄分を主成分とする赤褐色の「金泉」と炭酸(二酸化炭素)を多く含む「銀泉」の2種類があり、それぞれ共同浴場「金の湯」と「銀の湯」がある。

「銀泉」の源泉である炭酸泉は鉄砲水とも呼ばれ、かつては「ありまサイダー」として売り出され、炭酸煎餅は今も有馬温泉の名産品である。

有馬温泉の共同浴場「金の湯」
【有馬温泉 DATA】

[泉質]含鉄─ナトリウム─ 塩化物泉、炭酸泉、ラジウム泉[pH]6・0~8・5[湯の色]金の湯は茶褐色、銀の湯は無色透明(湧出直後に茶褐色になるところも)[温度]27・8~94・7℃

[主な効能]切り傷、やけど、皮膚病、胃腸病、神経痛、筋肉痛、リウマチ、高血圧症、末梢循環障害など

[共同浴場]金の湯、銀の湯

[問合せ先]有馬温泉観光総合案内所 TEL078 - 904 - 0708

[所在地]兵庫県神戸市北区有馬町

[アクセス]神戸電鉄有馬温泉駅。阪神高速7号北神戸線西宮山口南ICまたは有馬口ICよりすぐ

※本稿は、『秘湯マニアの温泉療法専門医が教える 心と体に効く温泉』(中央新書ラクレ)の一部を再編集したものです。