アナウンサー人生に終止符を打つことに
そう考えると、周りの情報にアンテナを張ることに加えて、自分からもわかりやすく意思表示しておくことって大事です。自分の考え方や大事にしていることを声に出して伝えて、相手にわかってもらうようにする。
そこが正しく伝わっていないと、誤解されてしまうばかりか、人生にとって重要な情報をキャッチできなくなることにもなりかねません。ですから、自分のことを理解してくれる人には、素直に気持ちを伝えておくことをお勧めします。
こうして僕は、30年間勤めたNHKを退職、アナウンサー人生に終止符を打ちました。
そして、安定志向だったはずの自分が定年を待たずに第二の人生に漕ぎ出し、新たな歯車が動き出しました。たまたま初任地の四国・高松で縁があった障害福祉の世界が僕の人脈や可能性をどんどん広げていき、学生時代までは全く知らなかった価値観が組み上げられ、その延長線上で医療的ケアが必要な子どもたちと出会い、再び仕事と生きがいが出会う現場を求めて転職への道を歩むことになりました。
こうして振り返ってみれば、放送のために一生懸命取り組んできた一つ一つの仕事が、結果的に今の職場へ向かうスピードを加速させていったようにも感じます。僕は決して運命論者ではありませんが、こればかりは運命的なものを感じずにはいられません。
※本稿は、『53歳の新人 NHKアナウンサーだった僕の転職』(新潮社)の一部を再編集したものです。
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「安定」か、「やりがい」か? 世間が「あっ」と驚いた人生の決断のすべて。
「NHKの顔」だった著者も気づけば若手に席を譲る世代に。定年まで粛々と……と覚悟するも、内心「仕事」と「やりがい」のバランスが保てない。そこへ関心があった福祉分野での求人を知りまさかの転職! 超安定企業を辞める決心と家族の反応、新天地での苦労、それでも思い切って良かったと実感する現在までを綴る転職体験記。