一人で出かけた父が欲しかった物

2月に入っても、札幌は大雪が続いていた。道路の状態が悪いので、父の家に到着するのが遅れそうだ。それを伝えようと、私は15時ちょうどに父に電話をかけた。しかし、何度かけても、固定電話も携帯電話も無応答だ。父はまた、倒れたのではないか。悪いことばかりを想像し、ドキドキしながら家に入ると、なんと、父は居間で肉まんを食べていた。

「電話に出ないから、心配して急いできたんだよ! どうしたの? その肉まん」
「おやつに、コンビニで買って来た」

雪のせいで歩道は肩幅くらいに狭まっているし、凍ってツルツルだ。数百メートル程離れたコンビニに一人で行ったなんて、信じられない。よく無事で帰ってきたものだ。転んで骨折でもしたら、長く入院しなければならなくなる。そのまま寝たきりになる可能性は高い。
私は怒りのスイッチが入り、無断で買い食いをした子どもを叱る時と同じ状態になった。

「パパ、雪道は危ないでしょ! もう少し待っててくれたら、私が車で乗せて行ったのに」

父はまったく反省する様子もなく、私に言い返した。

「肉まんを買いに行くだけなのに、なんでお前が来るのを待たなければならないんだ?」
「それならせめて、携帯くらい持って行ってよ!」

「お前からしか電話がかかってこないから、携帯は持って歩く意味がないんだ」

失礼な。世界にたった一人しかいいない娘に、なんてことを言うのだ。私は再びムッとしたが、父としゃべりたくなかったので、コンビニの袋を畳んだり、レシートを見たりした。