理想を追い求める人が現実を変えていく

結局マミコは「やっぱり企画開発部で働きたい」と元上司に申し出る。

その時、上司からは渋られるのだが、マミコはひるまず、「私図々しいんです」と言い放つのだ。

常に遠慮してばかりで、自分の本音を押さえつけていたマミコが、殻を脱いで自分の意思を主張する姿に、胸がスッとする。

マミコはさらに続ける。

「家庭と仕事の両立って、優秀な女性だけじゃなくて、私みたいな普通な社員ができてこそじゃないですか。この中の男性社員で、家庭と仕事を両立できている人って、何人いますか」

子育てしながらキャリアを変わらず追い続けられるのは、仕事においても優秀な人、というイメージがある。しかし、子どもがいようがいまいが、優秀であろうがなかろうが、働く人にはみなやりがいを求めたり、制度を使ったりする権利がある。そんな当たり前のことに気付かされたシーンだった。

そして、その後の峰岸の「図々しくならないと権利が守られないなんておかしいよね」という言葉にはさらにはっとさせらるし、胸にささる。

マミコの様子を見た麻理鈴が、恋愛も仕事も両方手に入れたい、それってやっぱり、わがままなのか、と峰岸に相談するシーンも印象的がある。

その時峰岸は麻理鈴は峰岸をまっすぐ見て言うのだ。
「あなたは他の人とは違う、欲しいものは全部手にいれなさい」と。

あなたが他の人とは違う、というのは、あなたは開拓者だ、という意味もあると私は受け取った。

変化をもたらす人、ロールモデルとなる人は、みんなが諦めてきたこと、みんなが無理だと言うことにも挑戦するし諦めない。きっと反発も無理解もある。

でも一つが欲しければ、もう一つは諦めなきゃいけないなんて、誰が決めた。

誰がなんと言おうと、自分の理想は譲ってはいけない。そうやって理想を追い求めていく人がいることで、理不尽な現実は少しずつ変わっていくのだと思う。

(写真提供◎写真AC)

前回「貧困家庭にはクリスマスや誕生日会はなかった。大学の飲み会3000円は痛いが、削れない必要経費と知った」はこちら

【関連記事】
ヒオカ「大学生で初めて知った親の年収は100万円。大学進学には意味があったが、奨学金は今も人生に重くのしかかる」
ヒオカ「〈海外で働きたい〉と閉鎖的な村を出て大学へ。しかし、格安シェアハウスの過酷な環境で骨と皮になり、夢は破れた」
二宮和也・多部未華子が夫婦役で挑む『マイファミリー』。4つの身代金誘拐事件、犯人は一体誰?その目的は?