十世三宅藤九郎として舞台に立つ和泉祥子さん(左)と、弟・ニ十世宗家の和泉元彌さん

女性狂言師が4人に

そういう意味では、この日の公演の前後で2人だった女性狂言師が一夜にして、倍の4人になったのだから、女性に道を開いてくれた亡き父も天国でびっくりしていることであろう。もとい、喜んでくれていると思う。

狂言に女人禁制のきまりは無い。和泉流の流是にも記されていない。私は妹の藤九郎と共に平成元年、同じ国立能楽堂で「史上初女性狂言師誕生記念・十世三宅藤九郎継承記念第1回和泉姉妹の会」を務めた。「男性、女性を問う前にひとりの人間として、人間狂言師として舞台に立ちなさい。女でもきちんと修業すれば出来る」と、当時としては革新的とも言われた開拓であったと思う。

とは言え、私達姉妹は舞台に立つ事を当たり前として自分を信じ、和泉元秀に付けてもらった芸を大切にここまで歩んできた。おかげ様で、和泉流に伝わる現行曲254曲中100曲できればプロとしてまずまずと言われる中、200曲を体得し、演じることが出来る。

時代の後押しもあった。

一番には、分け隔てなくいつでも本物を追求し、惜しみなく与えてくれる父である師匠の存在が大きかった。また、2〜3人で演じられる曲が多い狂言の世界で、お互い相手役を務める妹・三宅藤九郎という同志。そして、二十代目を受け継ぐ弟・和泉元彌の存在もそこにはあった。