「逃れられない」ってことを、誰かが言ってくれないかなあ
命がほしい人がいっぱいいるの。
私はいろんな金持ちをよく見てるんですけどね、最終的に行き着くところは、何がほしいって、命がほしいんだそうなんですよ。そういう人でも、命がもらえなくて人間は死んでいくのね。
そういうのを考えたら、もったいないじゃない。
こんなところで私が「もったいない」って言ったって、死のうと思っているのは、そこから逃れたいからそうするんだろうけど、この「逃れられない」ってことを、誰かが言ってくれないかなあ。
※本稿は、『9月1日 母からのバトン』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。
『9月1日 母からのバトン』(著:樹木希林、内田也哉子/ポプラ社)
「どうか、生きて」 2018年9月1日、病室で繰り返しつぶやいた樹木さん。夏休み明けのこの日、学校に行きたくないと思い悩む子どもたちが、自ら命を絶ってしまう。樹木さんは生前、不登校の子どもたちと語り合い、その事実を知っていた。樹木さんが遺した言葉と、それを受け内田也哉子さんが4名と対話し、紡ぎ出した言葉をまとめた一冊。