マイクとアンプの登場で、繊細な表現が可能に

語りと歌が混在するような歌唱はもともと、マイクのない時代のヴォードヴィルでも見られた。

黄金期のミュージカルにも、歌が得意ではない俳優向けに書かれた作品では、語りの要素の多いソングが書かれた。この点を振り返れば「語るように歌う」こと自体は新しい現象ではない。

しかし、マイクとアンプによる大音量が可能になり、様々な声質を表現として使うようになった後、そこから改めて繊細な表情が追求されるようになったのである。

それはたいてい演者個人が自発的に生み出した表現力で、共有されたメソッドではない。しかし徐々に、語りと歌のスイッチを自在に切り換えながら自然に聴かせられる表現がミュージカルの理想的な歌い方として多くの人に共有され始めている。