ニューヨークがプライドを失っていく様を目の当たりにして

当然、ぼくもロックダウンの間は出歩かないようにしていました。

幸いだったのは、バイクがあったこと。たまに自分でおにぎりを握って、水筒にお茶を入れて、人気(ひとけ)のない森林や川までツーリングをしました。

こういうときにアメリカはすごいな、と思ったのは、当時の大統領であるトランプからすぐに手紙が来たことです。外国人だし、申請も何もしていないんですけど、「あなたにお金を振り込みました」と書いてあるんです。

ニューヨークは2001年に同時多発テロ、いわゆる「9・11」を経験しているので、それとの比較もよく聞きました。

『HI, HOW ARE YOU?』(著:綾部祐二/KADOKAWA)

9・11では街中が停電になり、街の雰囲気もどんよりしていたそうです。でも、どこかでみんな負けちゃダメだっていうふうに団結する空気があったそうなんです。

一方で、コロナ禍では立ち向かう相手が見えないので、一致団結ができないと。そういう意味でも、絶望的な空気に支配されていたと思います。

ぼくはわりとどんな状況でも仕方ないとポジティブに受け入れるほうなんですけど、憧れていたニューヨークという街がプライドを失っていく様を目の当たりにして、さすがにうつうつとする時間も増えました。