「歴史学者」として著名な本郷和人先生。しかし大学入学後には環境の変化に対応することができず、大変悩んでいたそうで――(写真:本社写真部)

日本中世政治史、古文書学を専攻とし、テレビやラジオなどへのメディア出演も多い、東京大学史料編纂所の本郷和人教授。「歴史学者」として著名な存在ですが、学生時には大学入学後の環境の変化に対応することができず、大変悩んでいたといいます。しかし憔悴しながら過ごす学生生活に変化をもたらしてくれたのが、同窓生であり、また「歴史」だったそうで――。

入学直後にひきこもり

「高三の夏休みこそ勝負だ!」という緊迫した受験ムードは当時からあったが、私は母に命じられて予備校にこそ通いつつも、民族文化部の合宿で遊んだりと、正直なところあまり受験勉強をまじめにやらなかった。

志望校だった東京大学で何を学ぶのかを考えた際、美術史や歴史、文学、哲学などを網羅的に享受できる文三(教養学部文科三類)こそが自分にとって最適だろう、と狙いを絞り、なんとか合格をはたした。

このように東大入学についてサラッと書くと、さも順風満帆のように聞こえるかもしれないが、事実はまったく逆であった。

なんと四月のしょっぱなから環境の激変についていけない私はひきこもり状態に陥ってしまったのである。中学高校とリベラルかつ狭い世界で純粋培養されてきた私にとって、全国から多彩な学生がわっと集まる東京大学という場所は、カルチャーショックの魔窟にも思えた。

そもそも女子学生と交流する経験もほぼなかった自分のこと、政治活動に打ち込む学生や、遠い地方からやって来た学生、多浪生に苦学生など、あらゆるバックボーンを持つ人びとが混在するキャンパス模様に、ひたすら蒼ざめてしまったのである。