モデルの桐島かれんさん(左)と、エッセイストの桐島ノエルさん(右)
6月に刊行された家族での共著『ペガサスの記憶』では、母・桐島洋子さんが認知症であることが公表されています。診断から現在までの7年間、どんなことを話し合い、どのように母をサポートしてきたのでしょうか(構成=山田真理)

急激に進行した母の症状

かれん 「お母様の様子がおかしい」と、ローリー(弟で写真家・クリエイターの桐島ローランドさん)を含めたきょうだい3人で話したのは、8年前のこと。

異変に気づいたのは、私の誕生日に合わせてみんなでスリランカを旅行した時だったね。ホテルの部屋をいったん出ると自分で戻れなくなったりして、「最近、忘れっぽくなっているんじゃない?」と。

ノエル その少し前、私の住むカナダのマンションに滞在した時に「ここはどこだったかしら」と言っていたから、心配になってバンクーバーの医療機関で検査を受けてもらったの。

でも、単語を覚えて復唱するようなテストだと、母は言語能力が高いからけっこうできちゃうのよ(笑)。結果は認知症ではなく、「MCI(軽度認知障害)の初期」だった。

かれん おかしいと感じていても、まさかあの聡明で元気な母が認知症なんて信じられないというか、信じたくない気持ちが強かったね。

ノエル 母の元夫が病気で亡くなった頃だったから、その看病疲れやストレスで一時的に不安定になっているのかも、とか。私たち自身が現実から目をそむけていたのかもしれない。