秋には私の勤務先が市長に抗議、他社も事件に気付いて全国報道し、同時期に加害者が自殺。すると別の市幹部が「二人は前から男女の関係だった」と事実無根の噂を流し、週刊誌やインターネット上では加害者に対する同情と私へのバッシングが起こりました。

「夜に一人で会いに行ったんだから自業自得」「抵抗すれば事件は防げた」など記者の仕事に理解もなく、いわゆる《強かん神話》(性的暴行に関する偏見や固定観念に基づく誤った信念)に基づいて、いろいろな人が勝手な意見を無責任に垂れ流す……。

一方的に「女性記者のほうが悪い」という世論が形成されるのを見るのは、恐ろしい体験でした。自分がいろいろな人に体をもぎ取られていく、パッチワークの人形みたいに感じられて。

二次被害がひどくなるとさらに体調は悪化し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状に悩まされました。

被害者が自責の念に苛まれるのが性暴力の特徴です。私も自分が価値のない人間になったように感じ、洗顔や入浴も無意味なことのように思えました。内側から汚い人間になってしまったのだから、自分の求める清潔感はもう得られない。女性に見られることが苦痛となり、髪を短く切り、身の回りに気を使わなくなりました。

夜は布団に入るのが怖くて、完全に昼夜逆転。夏になると事件を思い出し、季節を問わず寒さを感じるように。