「あぁ、これで東京に帰れる!」
その後、山形県の鳥海山のふもとにある、吹浦というところに疎開しました。父と母は、戦地の慰問に駆り出されて家にいない。一人ぼっちの私を見かねて、自分の田舎である吹浦に連れて行ってくれたのは、なんと地区の見回りをしていたお巡りさんです。
8月15日、終戦を迎えた時にまず思ったのは、「あぁ、これで東京に帰れる!」ということだけでしたね。東京は一面焼け野原だとわかってはいましたが、それでもうれしかったのです。
戦争は、絶対にあってはならないと思います。戦争が始まると、突然「普通」がなくなり、爆弾ひとつで人間の命が奪われる。そして人間が、自分の意思があるのかないのかわからなくなってくる、というのが一番つらいですね。
私はごくあたりまえの日常をドラマにしたい。人間どうしの心が通う家族のドラマを、特殊なものではなく、これが普通なんだってことを皆さんに見てもらいたい。そしてこうした生活をして、皆さんに幸せになってもらいたい。それが私の願いです。