自分の幼少期を振り返って

書き下ろしエッセイで子育てへのより深い思いを書くうちに、なぜこういう育て方、愛し方なのか、自分の幼少期を振り返る必要性を感じました。特に両親とのことは、一回ちゃんと向き合わねばならぬと覚悟を決めて。書き出すまでにはかなり勇気が必要でしたね。

書き進めるうちに思い出すこともたくさんあり、それはぱーっと目の前が開けるというより、深い森をかき分け、かき分け進んでいくような、けっこう大変な作業でした。

でもその先に見えたのは、すごく温かくて、愛のある景色で。たとえば東京の家には両親の仕事仲間がいつもいて、音楽的にはすごく才能があっても社会人としてはダメな人とか(笑)。でも魅力的でかっこいい大人がたくさんいた。

私も子どもが生まれてすぐの頃から、周りの人たちに協力してもらいながらレギュラーラジオの収録現場や自分のコンサート会場にも娘と一緒に行っていました。それは、「あの頃が楽しかったし、自分の人生にも良い影響があったと思ってるからなんだな」と再確認できました。

音楽と向き合う両親に対して幼少期に抱いていた正直な気持ちや、思春期の頃の父からの告白など、ここまで家族についてきちんと書くのは初めてでした。両親には「書いてもいい?」と一応お許しはもらって。人間くさい魅力が伝わるように書けたらいいなと思っていました。

母からは全部を書き終えた後に、「よく書けてるじゃん」と、一言いただきました。(笑)

娘のおかげで出会ったこと、気づいたことを、本書を通じて皆さんにもお伝えできたら幸せです。