消化器外科医・温泉療法専門医であり、海外も含め200カ所以上の温泉を巡ってきた著者が勧める、温泉の世界。安心して、どっぷりと浸かってみてください。
※本記事は『秘湯マニアの温泉療法専門医が教える 心と体に効く温泉』
(佐々木政一、中央新書ラクレ)の解説を再構成しています。

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日本各地に残るワシによる温泉発見の由来や伝説

歴史ある温泉の多くには、開湯にまつわる発見伝説が存在する。温泉を見付けたのは鳥獣や高僧、武将、日本神話の神など多種多様で、中には複数のエピソードを持つ温泉も。

真偽のほどはさておき、日本各地に残る鳥獣による温泉発見の由来や伝説を紹介しよう。

 

●湯村〈ゆむら〉温泉(山梨県甲府市湯村)

手負いのワシが飛来して湯の湧く窪地に通い、数日にして平癒したのを見た里人が試してみたところ、切り傷や皮膚病などに驚くほどの効果があった。

このことが武田家にも聞こえ、湯治用の湯壺を造り「信玄の隠し湯」の一つになり、信玄自身も湯治をしたという。

この発見由来から「鷲の湯」と呼ばれ、後に「湯村温泉」になった。

湯村(ゆむら)温泉(写真提供◎photoAC)