「ブリ大根の酒蒸し」
栄養士でありフードコーディネーターでもある藤岡操さんが「食堂のおかみ」になりきって提案するレシピ連載。大胆にも、この店のお品書きは「酒蒸し」1本! といっても、具材がや調味料が変われば趣も変わる魔法のレシピ。蒸し器がなくても、フライパンと料理酒さえあれば誰でもできるメニューの数々です。第1回は「ブリ大根の酒蒸し」です。

本日のメニュー
「ブリ大根の酒蒸し」

私は乙女座。乙女座といえば、計画的できっちりしていて完璧主義だと言われるけれど、私にはあまり当てはまらない気がする。思い立ったらすぐ行動してしまうし、本質がブレていなければ問題なし、小さなことは気にしない。

毎日の料理も、ほとんどが行き当たりばったり。使えそうな食材をザクザクッと買って、ひらめくままに組み合わせて作る。それが楽しいし、性に合っているのだと思う。

そんな私が、最強だと確信しているのが酒蒸しだ。フライパンにザクッと食材を入れて、酒をベースに調味料を加えて蓋をして火にかけるだけ。こんなにシンプルなのに、食材の旨味や香りが閉じ込められてギュッと凝縮する。食材の組み合わせも味のアレンジも自由で無限。忙しいときもラクラク作れて、こんなに幸せな料理があるだろうかと思うほど、ぞっこん。

というわけで、こちら「婦人公論.jp」で隔週火曜日限定で「今日も酒蒸し なりっち食堂」を開店することとなった。

「なりっち」というのは、子どものころからのあだ名。旧姓が成川(なりかわ)だから「なりっち」。古くからの友だちは今でも私のことを「なりっち」と呼ぶ。釣り雑誌『つり情報』の編集部で働いていたときも「なりっち」の名前で連載コーナーを持ちつつ日々の記事を書き、自ら取材で釣ってきた魚をせっせとさばいては友だちに振る舞っていたから、「なりっち食堂」は20年以上前からあったような気もする。

当時は、マダイを豪快に丸干しにしたり(これがとても美味しかった!)、初めて作ったさつま揚げを編集部に持って行ったら、冷めて岩のようにカチンコチンになっていたり、たくさん釣れるサバをなんとか美味しく食べようとサバカレー作りにハマったり……料理というより実験だったけれど、(会社に入ったときは釣りも初心者だった!)すべては今につながる愛おしい時間だ。