酒蒸しの力
焼かずにそのまま酒蒸しにしてもいいけれど、ブリと大根に少し焼き目を付けておくと風味が増し、「あらかじめ塩で洗って湯通し」をしなくてもブリの臭みがしっかり抑えられる。わさびの辛味は蒸している間にほとんど飛んで香りだけが残るから、辛いのが苦手な人も安心して食べられる。
蒸したてのふっくらとしたブリの身をほぐし、大根と一緒に口に入れる。酒の香り、ブリの旨味が大根からもじゅわ~っとあふれ出し、ほどよい塩気とわさび、ごま油の風味が広がる。
とてもシンプルなのに奥行きがあって、手間暇かけたような味。
これが酒蒸しの力だ。
この料理を作る前に、ブリ大根の柚子胡椒酒蒸しスパゲッティも作ったのだが、柚子胡椒の辛味と香りが利いてとても美味しかった。同じブリ大根の酒蒸しでも、合わせる調味料ひとつ、オイルひとつを変えるだけでも違う料理になる。つまり、レシピ通りに調味料が揃わなくてもノープロブレム。その日の気分で自由にアレンジできるから、私のようなせっかちで気ままな人間にぴったりだ。
酒蒸しばかりで飽きない? なんて心配は無用。
ブリ大根をベースに考えても、ナンプラーを使ってもいいし、レモンを搾ったり、ごま油と豆板醤でピリ辛韓国風にしたりもいい。韓国風にするならブリをカツオに変えても合いそうだし、牛肉を使っても美味しそう。おまけに酒蒸しは、蒸し終わってからでも味を調整できる懐の深さも持ち合わせている。後からポン酢やショウガ醬油をかけたり、オリーブオイルと塩を付けながら食べるのもいい……。
どんな想像をしても、面倒なことはひとつもないし、どれも美味しそうでワクワクしてくる。
だから酒蒸しはやめられない。
●本日の汁物とお惣菜
〈大根のみぞれ味噌汁、大根の葉と皮とひじきのだし醤油炒め〉
『ごはんに化ける ズルイおつまみ』
(著:藤岡操/EDITORS) 2022年10月26日発売!
コロナ禍のいま、自宅で楽しむおつまみの本が人気です。
私は飲むけれどパートナーは飲まないというケースや、お酒を嗜む夫婦のほかに子どもがいるケースも少なくはありません。
そこで、ワインのおつまみだけど、ちょっとしたアレンジで晩御飯のおかずにもなる! 1品つくれば家族みんなで楽しめるそんなレシピを集めました。
難しいことも面倒なこともなし。身近な食材と調味料の組み合わせだけで、楽しみはうんと広がります。どこで売っているのか分からないおしゃれ過ぎる食材も使用していません。食材も、料理の工程も少ないものばかりです。
揚げ物を食べたいけれど衣の準備が面倒……ならば、春巻きの皮を使ってパリッと焼こう!
冷蔵庫に肉も魚もない……ならば、ゆで卵と粉チーズでご馳走にしちゃおう!
和風の煮物とワインを合わせたい……ならばオリーブオイルと黒コショウをかけるだけで相性抜群に!
そんな気楽な発想で、ワインと一緒の晩ごはんを自由にのびのび楽しみませんか?
版型はコロンとした正方形に近い可愛いかたち。簡単な工程なので、本と睨めっこする必要はありません。いつまでも手元に置いておきたい、パラパラ眺めるだけで楽しくなれるそんなレシピ本です。