10年前にパリで起こった異変

脳梗塞やくも膜下出血などの脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破れたりする病でしょう? 老化現象で血管が弱くなってるってこともあるようだけど、あたしは血圧やコレステロール値が高いといった、遺伝的な体質によるところが大きいように思う。うちの家系にはがんで死んだ人はいなくて、脳卒中が目立つんです。

あとは生活習慣ですよね。あたしの場合は喫煙。術後は一日に3本までって決めていたんだけれど、気づけば元に戻ってました。大きな声じゃ言えないけど、一日に2箱くらいかな。わかっちゃいるけどやめられないってやつで。バカよね。下肢閉塞性動脈硬化症で、脚を切断するギリギリのところまでいったこともあるというのに。

初めて脚に異変を感じたのは10年くらい前。最初は右脚のふくらはぎの血管が浮き出てきたなと思っていたのだけど、そのうちにだるかったり、むくんだり、痛くて歩けないなんて日も。それで病院へ行ったのよ。でも医者との相性が合わなくて……。結局のところ、痛み止めを処方してもらって毎年恒例のパリ旅行へ出かけました。

あたしのパリの家に遊びに来た友人が、「久しぶりに会ったら、なんなの? その脚は」って言いながらゲラゲラ笑っていたのを覚えてます。言われてみれば太ももがダラーンとしちゃってて。そりゃそうよ、血が通ってなかったんですから。そうとも知らず、もっと歩くようにしなくちゃと思ってたなんて、勘違いもいいところ。

その結果、パリ滞在中に脚が痛くて歩けなくなってしまったんです。友人に「老化現象じゃないの?」って揶揄されたけど、それにしては急にきたわねって思ったの。去年はハイヒールを履いてモンパルナスからオペラ座まで問題なく歩けたのにって。いずれにしてもカッコつけていられないからスニーカーを買ったり、サンダルを履いたりしてみたけど、どうにも痛くて。

帰国後、今度は総合病院へ行きました。そうしたら医師が「麻紀さん、ずいぶん我慢しましたね」って言うんです。続いて「あと少し来るのが遅れていたら、右脚は壊死して切断しなくてはいけなかったでしょう」って告げられて、えーっ! って。

すぐに局所麻酔で右脚のカテーテル手術を受けました。脚の付け根の動脈に空けた小さな穴からカテーテルを入れて、ステントで狭くなった冠動脈を広げたんです。翌年は左脚の調子が悪くなって、右脚と同様にカテーテル手術を受けました。

<後編へつづく