「この人が病人?」と言われるほど普通な夫

主人は手術で「人工肛門」になってしまったので、自宅に戻ってからはそのケア(ストーマケア)が大変で。人工肛門は排ガスや排便を自分でコントロールできません。腹部に造られた人工肛門部に袋(パウチ)を貼り、そこにどんどん便がたまっていくんです。

そしてたまったらパウチを交換。すっごく食べる人だから、食べている間にもパウチがどんどん膨らんでいくんです。交換のタイミングが難しくて、いつもパウチを見ていたような感じでした。

しかも最初の頃はそれがうまく貼れなくて、何度も貼り直して……1枚1100円くらいするのですけどね。人工肛門にパウチの中央を合わせて、周りの皮膚にしっかり密着させないとダメで、1ミリでもずれるともれてしまう。水滴(便)が流れ出てしまうんです。

専門職の方に家まで来てもらって指導してもらい、主人も時々病院で教えてもらって、だんだん覚えていきました。

自宅で過ごしながら、抗がん剤治療のため月に2回くらい病院に通いました。でも副作用らしいことは全くなくて、周囲から「この人が病人?」と何度も言われるほど。

食欲も衰えなかったですし、抗がん剤治療も苦しまなかったから最後まで続けられました。ただ、どんなに食べてもだんだんと痩せてはいきましたね。

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余命3か月から、振り返れば7年7か月の闘病生活―その間にA病院に緊急的に入院したことが5回あった。最後の入院は、亡くなる前年、2019年11月のことだった。

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突然高熱が出たんです。私が慌てて担当の先生に電話して状況を説明すると、「病院まで連れてきてもらえないか」と言われました。主人を抱えるようにしてタクシーに乗り込み、A病院に向かいました。彼の血圧は低下し、危険な状態で即入院。でも本人は病室に連れていかれながらも、「うちに帰りたい。帰る。大丈夫」とうわごとのように繰り返していたんですよ。

入院して1か月経って状態が落ち着くと、主人は再び「家に帰りたい」とはっきり訴えるようになりました。