大腸がんの発見
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市川さんが検査を受けている間、妻は外の待合室にいた。
しばらくして呼ばれ、市川さん(妻)が診察室に入ると、テレビのような画面に大腸の写真がいくつも張り出されていたという。点々とした白いぽちぽちを見た時、大腸がんで逝った実兄のレントゲン写真を思い出し、妻は息を吞んだ。
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先生は主人に向かって厳しい口調で言いました。
「これは大腸がん。即手術しないとダメだ」
主人はびっくりして、すぐさま言葉が出ないようでした。
「いや、今日は女房の付き添いで来て……」
そう答えるのがやっと。
「ついでに来て病気が見つかってよかったじゃない。命は一つしかないんだから。A病院とB病院、C病院の中でどこがいいかな。すぐに紹介しましょう」
どこも大学病院です。でも主人は「……1日か2日、考えさせてください」って。先生は首を横に振りました。一刻の猶予もなかったんでしょう。だから私が「先生、A病院でお願いします」と申し出たんです。そこが自宅から一番近い病院でした。先生はその場で受話器をとり、A病院に連絡し、2日後に受診の予約をとってくれました。