「もう無理です。何と言われようと無理なんです」

ホームヘルパーさん? なかなかお願いできませんでした。だって主人が要介護にずっと認定されなかったんです。がん末期で人工肛門でもあるのに、認定を受けるための調査で「聞こえてますか」「今日は何日ですか」という質問が嫌だったみたい。

「人を馬鹿にしやがって。俺は病気じゃねえ!」って怒鳴ってしまうの。「馬鹿にしているわけではなく、仕事だから聞いているのよ」と説明してもダメ。それで数年経って主治医の先生から「介護認定、受けていますよね?」と尋ねられて「まだ受けていません」と事情を話すと、先生が驚いて……。区のほうに認定がおりるように主治医の先生が手紙を書いてくれました。それでようやく。

ただ基本的には私じゃなきゃダメなのよね。我が子もいるのに、すぐ私を呼ぶんです。病院からも"24時間のお手伝いさん"を提案されたけれど、主人の性格からしてそういう人に頼まないのはわかった。だから病院にお願いしたかったんです。

でも、担当医は「奥さん、隣の部屋で話しましょう」と、場所を移動して私と二人きりになるなり、こう言ったんです。

「ご主人は今までよくがんばってきました。ですが、さまざまな検査から判断し、もう長く生存できる可能性はありません。ご本人は『家に帰りたい』と泣きながら私に言いました。どうかお正月を家で迎えさせてあげてくれませんか。もうお正月までさえ、もつかわからない状態ですが……」

担当の先生は「何かの時は相談にのりますから」とも言いました。でも心の中では「無責任」だと思いました。だって家で実際に看るのは私なんですよ。

だから私ももう一度訴えました。

「でも先生、私もこれまでの介護で精神的にも肉体的にも限界なんです。腰も痛い背中も痛い、夜中に主人に何度も呼ばれるから睡眠不足。娘は仕事優先で手伝ってくれません。主人のことはもちろん大切ですが、私が倒れたらアウトなんです。もう無理です。何と言われようと無理なんです」