ほぼ二人きりでの生活で、朝から晩までマンツーマンの介護生活は約半年間続き――(提供:photoAC)

心身の限界に達して

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最後の会話は、死の3日前のことだった。

妻が身の回りの世話をしていると、市川さんから突然「手をにぎっていい?」と尋ねられた。

「どうしたのよ。この年になって……」と妻が苦笑いしながら、「いいわよ」と両手を差し出す。市川さんはその手をぎゅっと握りながら「悪いな、悪いな、こんなに迷惑かけて悪いな」と口にした。

「夫婦だから、別にいいのよ」

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でも最後の数日は私の心身が限界に達していました。寝床から起き上がれなくなってしまったんです。そのため、24時間の介護サポートをお願いしました。夜10時から朝7時までのサポートは1日2万円以上かかるので、それまで夜間は頼まなかったのですが、もう誰かの手を借りなければ日常生活を送ることが不可能な状態でした。

7月のある日の明け方、2階で寝ていたら、部屋のドアをトントンとノックする音がしました。「どうぞ」と言うと、数日前からお願いしていた介護サポートの人がそこにいました。

「旦那さん、今、息を引き取りました」

「えっ……」

私は一瞬言葉が出ませんでしたが、その方から「眠るように亡くなりました」と告げられて、安堵しました。