慎ましさを失うと、魅力的な人間性まで喪失する

夫を巻き込んだのは、私の悪巧みである。

私は常々、「人は体の動く限り、毎日、お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行かねばなりません」と脅していた。

運動能力を維持するためと、前歴が何であろうと――大学教授であろうと、社長であろうと、大臣であろうと――生きるための仕事は一人の人としてする、という慎ましさを失うと、魅力的な人間性まで喪失する、と思っているからだ。

それと世間では、最近、認知症になりたくなければ、指先を動かせ、字を書け、というようなことが信じられ始めてきたからでもある。