今季始まったぶっささるドラマ
正直、とってつけたようなお決まり的に恋愛要素がぶち込まれた最近のドラマに辟易としていた。別に恋愛ドラマが嫌いなのではない。恋愛を入れる必然性がないところで、これ入れときゃ視聴者喜ぶっしょ的な安直さと短絡さがすけて見えるような恋愛要素の入れ方や演出に嫌気がさしたのだ。
もっとえぐられるような、血が沸き立つようなドラマを見たいんじゃあああと飢えまくっていた私に、ぶっささるドラマが今季始まった。冤罪事件をテーマにした『エルピス-希望、あるいは災い-』(カンテレ・フジテレビ系)だ。
冤罪、しかもそれによって死刑が確定している、という国家権力による最大の人権侵害ともいえる事案を扱っている。
社会問題を扱うドラマは決して少なくはない。しかし、数はあっても問題に関心がない人を引き込むことは容易ではない。どうやったら、関心のない層に届けられるのか、これは作り手、書き手ならば必ず通る悩みではないか。
そんな中、『エルピス』は視聴者を鮮やかに引き込み、巻き込み、現代社会が抱える闇、歪な構造、腐敗した組織、正義と保身の間で揺れる複雑な人間模様について否応なしに考えざるを得なくさせる、そんなドラマだ。
そんな果てしない吸引力のある、別格の上質さを生み出しているのは、周知の通り、話題作を手がけるプロデューサーの佐野亜裕美氏、脚本の渡辺あや氏を始めとする制作陣の手腕だろうが、加えて、エンディングと俳優陣の演技もまた、このドラマを語る上で外せない要素だ。
まずはエンディング。トラックメーカーのSTUTS、シンガーソングライターのbutaji、Suchmosのボーカルで知られるYONCEがタッグを組んでいる。
STUTSとbutajiは、エルピスのプロデューサーである佐野氏が手がけ、大きな話題を呼んだ『大豆田とわ子と三人の元夫』のエンディングでもタッグを組んだ。毎回マイナーチェンジがあり、各話のストーリーや登場人物のセリフにリンクしたラップと俳優陣のコラボが画期的で、音楽系のバラエティ番組でも取り上げられ音楽家たちからも高い評価を受けた。
切ないメロディーに、重みのある言葉とYONCEの圧倒的な歌声、各分野のトップランナーの演奏が重なる。
スマホ越しでも圧倒され、胸を揺さぶられる紛れもない神曲、名曲だ。
ドラマの内容を知っている人なら思わず唸るようなフレーズがちりばめられている。