「この事実を、額面通り受け取れ!」という強烈な怒り
最終回を控えた直前の9話は完全に「村井劇場」だった。
村井は過去に、真実を報道するために奔走した結果、深夜バラエティに左遷されていた。
そんな事情が明らかになったことで、最初に恵那や拓朗がこの事件を持ち込んだ時、
「お前らごときがおもちゃみたいな正義感で手出していいようなことじゃねえんだよ」
「どこに何があるかもわかってないようなガキがぶんぶん棒振り回したりしたら大変な目に遭うってこと」
と激しく叱責したことにも納得がいく。
村井は経験していたからわかっていたのだ。
闇に手を伸ばすことの意味を。国家権力と対峙するというのがどういうことなのかということを。
人の言動は、事情がわかればまったく違ったものに見えてくることがある。
村井という人物を通して、そんな人間の多面さを改めて教えられる。
そして真実を告発しようと決心した証人・大門亨(迫田孝也)の死に直面し、葬儀で普段の飄々とした振る舞いを見せたかと思えば、大門雄二副総理(山路和弘)の「亨への追悼コメント」を録音した記者のボイスレコーダーを奪って叩き潰した。黒幕とおぼしき大門副総理側につく斎藤に「斎藤君、この先はもう戻ってこれねえぞ」と迫るシーンでの凄み、気迫。
9話のラストシーンで『NEWS8』のスタジオに突然乱入、パイプイスを振り回してセットを破壊する。その暴れる姿からは、報道への何重もの絶望と、ひとりの人間が不条理な死を遂げても、「平和なフリして」回る社会、誰かの犠牲の上に成り立つ平和の上に安住しようとする傍観者たちへの凄まじい怒りを感じた。
「この事実を、額面通り受け取れ!」という強烈な怒りだ。
村井の怒りの爆発、物理的な破壊行為を見て、私自身も目を覚まされた気分だった。
そうだよな、一人の命が消されることの重さって、それぐらいの怒りに匹敵するものだよな、と。
現実の不条理を額面通り受け取り、その重さに見合った反応をしていたら壊れてしまう。
だから私たちは、無意識のうちにその事実を矮小化し、確かに見えているのに見えていないふりをする。
そんな私たちに張り手を食らわせるような、あまりにまっすぐな怒りだった。