「豚バラとモヤシの巣ごもり卵」
栄養士でありフードコーディネーターでもある藤岡操さんが「食堂のおかみ」になりきって提案するレシピ連載。大胆にも、この店のお品書きは「酒蒸し」1本! といっても、具材がや調味料が変われば趣も変わる魔法のレシピ。蒸し器がなくても、フライパンと料理酒さえあれば誰でもできるメニューの数々です。第4回は「豚バラとモヤシの巣ごもり卵」です。

本日のメニュー
「豚バラとモヤシの巣ごもり卵」

巣ごもり卵。なんて可愛らしい名前の料理だろう。こんもりと盛った野菜の真ん中をくぼませ、そこに卵を落とし入れて蒸し焼きにする。表面が白くなった卵を割ると、鮮やかな黄色の卵黄がとろりと流れ出す。最高のクライマックス! 

巣ごもり卵は、高い演出力でいつも私たちを楽しませてくれる料理だ。肉汁溢れるハンバーグもいい、脂ノリノリの中トロもいい。でも、巣ごもり卵のドラマチックさも、負けてはいない(と、個人的に思う)。

一人暮らしのときは、本当によく食べた。よく作って、よく焦がしていた記憶がある。卵にほどよく火を通そうと思って、野菜を焦がしていたのだ。何せ、卵を半熟にするためには、弱火で長く火を通すと黄身まで固まってしまうし、強火では卵に火が通る前に野菜の下の部分が焦げてしまうから、これが案外難しい。

でも、今ならわかる。酒蒸しにすればよかったのだ。

料理では「呼び水」と言って、食材に含まれる水分を出やすくするために、少し水分を加えるという方法がある。たとえば、アップルパイ用のリンゴは味を凝縮させるため、水で煮るのではなく蒸し煮にするのだが、そのままでは火の通りにムラが出たり、焦げたりする。そこで少し水を足すと、リンゴから水分が出て均一に火が通り、焦げるのも防げる。もちろん、水を少し足すだけでもいいのだけれど、料理によっては酒を使うことで旨味や風味が増して格段に美味しくなる。

だから私の巣ごもり卵は、ただの蒸し焼きではなく、酒蒸しなのだ。