今、振り返って思うのは、「いい言葉」よりも「マイナスの言葉」の声のほうが、当事者には大きく聞こえてしまうということ。当時、肯定的な意見をもっとよく受け止めていたら、より前向きに頑張れたのかもしれません。

それでも、私は、芸能人に対して「表に立つ人間だから、何を言われても仕方ない」という考えはおかしいと思う。俳優も同じ人間だし、プライバシーも人権もあります。

幸いなことにここ数年、インターネットでの誹謗中傷に対しては、毅然とした態度を取ることが支持されていますよね。言葉はときに鋭い凶器にもなりうる。その危険性を理解したうえで、すべての方が発言してほしいです。

 

さりげない日常の贅沢な時間

退団後はグッと世界が広がりましたが、中でも映像作品への参加は、新鮮な経験でした。

2023年公開予定の映画『わたしの幸せな結婚』が撮影されたのは、退団の数ヵ月後。もちろん映画の撮影は初めてで、塚原あゆ子監督にはかなり鍛えられました。(笑)

特に声のトーンは「〈セリフを言っている〉感が強いから、もっとボソボソ喋ってほしい」と。自分では精一杯ナチュラルに喋っているつもりでした。ところが、初号試写を観たら、ほかのキャストの方たちは日常生活で話すようなトーンだったので、なるほど! と。

1つのカットを撮るために、カメラマンや照明、録音の方など大勢のスタッフが動く映画の現場というのも興味深かったです。

ドラマ『マイファミリー』の撮影はその後だったので、自然体で現場に入れました。「映像の現場では十分に声を拾えるのだから、今度はボソボソで大丈夫だ」と、余裕を持って挑めた気がしています。