消化器外科医・温泉療法専門医であり、海外も含め200カ所以上の温泉を巡ってきた著者が勧める、温泉の世界。安心して、どっぷりと浸かってみてください。
※本記事は『秘湯マニアの温泉療法専門医が教える 心と体に効く温泉』
(佐々木政一、中央新書ラクレ)の解説を再構成しています。

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オオカミによる温泉発見の由来や伝説

歴史ある温泉の多くには、開湯にまつわる発見伝説が存在する。温泉を見付けたのは鳥獣や高僧、武将、日本神話の神など多種多様で、中には複数のエピソードを持つ温泉も。

真偽のほどはさておき、日本各地に残る鳥獣による温泉発見の由来や伝説を紹介しよう。

 

●灰沢(はいざわ)鉱泉(長野県木曽郡上松町)

伝承では1300年ほど前の発見とされる。狩人がシカを追って山へ入ると、谷の川辺の水の中に1匹のオオカミ(山イヌ)が静かに横たわっていた。

近づいてみると、そこには温泉が湧いており、オオカミはその温泉で傷を癒していた。別名「山犬の湯」とも呼ばれていた。

一軒宿の「灰沢鉱泉旅館」の創業は大正時代であるが、明治時代にはすでに源泉の脇に掘っ立て小屋があったという。