そんな状態が5年続いた。居場所も味方もいないなか、なんとか頑張っていたが、ある日「もう無理だ」と悟って退職を決める。14年、好きだったからこそ続けられた仕事。辞めたくはなかったが、心が限界だった。
退職することを亜紀と慶子に話すと、2人からは「そう。道で会ったら声を掛けるわ」と言われた。
一瞬、耳を疑う。たったそれだけ? あれだけ仲良くしていたのに、友だちとしての言葉はそれだけ? 思わず問いつめると、亜紀は「私たちから誘ってもらえるなんて期待しないで。会いたいのなら、そっちから誘って」とそっけなく答える。心が凍った。和美だけでなく、この2人も私を友だちとは思っていなかったのか。
退職の日、部署から花束はもらったが、送別会はなかった。これが14年間関わった人たちとの結末。こんなにも人は態度が変わるものなのか。失望よりもっと深い、大きな傷が私の心に残った。
それ以来、私は人に心を許さないようにしている。どんなに深く関わっても、結局、人は裏切るのだ。それならいっそ、「つきあいが悪い」と言われるほうがいい。
誘われるたびに、すみませんと頭を下げて家路につく。私は一人で家に籠もる。誰からも傷つけられない、繭の中に。