現在の社長が跡を継いでから居心地が悪くなり…

こうした事情を社長が知っているのはなぜか。Fさんの実家と社長の自宅兼工場は近くにあり、Fさんの家庭の事情は近所ではよく知られていたからだ。

また、現在の社長は二代目で、父親である先代社長にFさんが拾ってもらったという事情もあるようだ。

Fさんは、高校中退の自分を雇い、仕事を教えてくれた先代には心から感謝している。

だが、その先代が亡くなり、現在の社長が跡を継いでから居心地が悪くなり、最近それに拍車がかかったという。

『自己正当化という病』(著:片田珠美/祥伝社新書)

なぜかといえば、毎朝の朝礼で社長が「メンタルの弱い奴はダメ」「有休を取ると、その分周囲の負担が増えることを忘れるな」といった話をしたからだ。

従業員が少ない町工場で心療内科に通院していたのはFさんただ1人だし、月に1度の受診日には有休を取っていた。

だから、Fさんが「朝礼での社長の話は自分に対する当てこすりではないか」と疑ったとしても、単なる被害妄想と片づけるわけにはいかないだろう。