「かむかう」=人の考えを参考に自分の考えを深める
昔の日本の言葉で「かむかう」という言葉があります。聞いたことがないと思うけれど、きょう紹介する本居宣長という江戸時代の学者が『玉勝間(たまかつま)』という本に書いています。「考える」という言葉の基になった昔の言葉で、古語ですね。最初の「か」に意味はなく、「むかう」という言葉が語源になっています。
つまり考えるとは、自分が身をもってものごとや相手と向き合うことで、他人の考えをまねするという意味があるのです。人の考えを自分のものにすることから「考える」ことが始まっているということで、人とのつながりから生まれる精神的作用と言ってもいいのかもしれません。
人間にとって考えるというのは、とても大事なことでしょう。考える人になりたいでしょう。その出発点は人の考えを参考にすることなんです。実は日本語だけでなく、英語でもドイツ語でも同じようなことがあります。
英語で考えるってなんて言いますか。そう、thinkだね。似ている言葉があるんです。thank、thank youって言うでしょう、感謝する時に。考えるという言葉と、人に感謝するという言葉は、よく似ているんです。
ドイツ語でも、考えるはdenken、感謝するのはdankenで語源が同じだそうです。実はハイデガーという哲学者がこのことを論文にしているので、なるほどと思ったのだけれど、日本語も同じなんですね。人の考えていることを取り入れ、人との関わりのなかで人間は発展していくんですね。友達やきょうだいとつきあうことが、考えを豊かにしてくれるのです。だから中1の学年テーマが「人間関係」なのですが、他の人の考えを参考にすると自分の考えが深くなるという意味で、きょう1時間目は二人の人を紹介したいと思います。