「夢を叶える」というのはきれいな言葉ですが、その下には何千、何万の苦労や不安、挫折があります(撮影:文藝春秋)
EXILE、EXILE THE SECONDのパフォーマーとしてだけでなく、舞台やドラマなどの映像作品で俳優としても活躍する橘ケンチさん。2月8日に自身初となる小説『パーマネント・ブルー』が刊行されるにあたり、EXILEに入るまでの軌跡や、夢を追うことに対する思いを聞きました(構成◎上田恵子)

ただ仲間と一緒に踊ることが楽しかった

EXILEきっての読書家としても有名な橘ケンチさん。2018年にトークイベントで出会った作家の北方謙三さんから小説を書くことを勧められ、2019年から執筆を始めたとのこと。主人公・賢太と彼のダンス仲間との青春を描いた物語は、ケンチさん自身とも重なる部分が多い作品です。ケンチさんがダンスの魅力を知ったのは、高校生の頃だと言います。

ダンスとの出会いは、高校時代に観たバラエティ番組のビデオでした。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』という番組に『ダンス甲子園』というコーナーがあって、そこに出ていたダンス&ボーカルデュオのLL BROTHERS(エルエルブラザーズ)に衝撃を受けたのが最初です。

ダンスを本格的に始めたのは、一浪して大学に入ってから。のちにEXILEのメンバーとして活動を共にする、TETSUYAと出会ったのもその頃です。地元が同じ横須賀で、いま思えば本当に奇跡的な出会いでした。

大学へ行きながらダンスチームを結成し、クラブイベントなどで踊るうち、「将来はダンスで身を立てたい」と考えるように。でも、それを告げた時の家族の反応は最悪で、「何を言っているの? 大学まで行ってダンスとか、意味が分からない」と全否定でした。専攻が理系だったので、両親は僕がエンジニアになると思っていたんじゃないでしょうか。

父も普通のサラリーマンでしたし、卒業生の99.9%が就職する大学で、まさか息子が残りの0.1%になるとは考えもしなかったと思います。当時、父との関係はものすごく悪かったです。

大学の同級生からも、めちゃくちゃ心配されました。「就活しないのヤバくない?」って(笑)。とはいえ僕としても、“こうなりたい”という明確な目標があったわけじゃないんですよね。ただダンスが、そして仲間と一緒に踊ることが楽しくて。レッスンをやって、クラブでショータイムをして、ギャラもらって、アーティストのバックダンサーを務めて、たまに大きなイベントに出て歓声を浴びて……。そういう先輩ダンサーたちに憧れていました。