これがねえ、まるで戦いみたいなの。だって、スマホが「目標にX歩足りない」だの、「昨日からX歩減った」だのって、細かいことをいちいち言ってくるのよ。だから言われないですむように、毎日一所懸命歩いています。

この年になると、いちばん怖いのは骨折です。10年くらい前の雨の日に、濡れた路面で滑って転んで大腿骨を骨折してしまったことがあります。このとき履いていた靴にちょっとヒールがついていたの。

「こんなモノを履いていたからケガをしたんだ。もうヒールのある靴なんて履いている年じゃない。己を知れ!」と言われたような気持ちで。それで、この骨折をきっかけにして、ヒールのついた靴はすべて処分しました。もったいないけれど、これも動ける体をキープするため。

さて、体のほうは歩くことでなんとか持たせるとして、頭はどうするか? 役者はセリフが覚えられなくなったら、いくら歩けてもつとまりません。ずいぶん前から記憶力は落ち始めていて、これからどうなっちゃうんだろうという不安はありつつも、今のところ努力でカバーしています。

以前の私なら、セリフは70%程度頭に入れておけば、あとは現場でなんとかなる、という自信がありました。ところが、そうも言っていられなくなってきたので、今は120%覚えてから現場に入るようにしています。

でないと、現場であわてちゃう。耳も遠くなってきているので、相手のセリフもちゃんと覚えていかないと、相手に失礼なことになる。だから、今の私は、若い頃と比べると考えられないほどの勉強家なんですよ。(笑)