三河一向一揆編が終了。その背後で激しく激突していた「タテ」と「ヨコ」の関係とは――(写真提供:Photo AC)

松本潤さん演じる徳川家康がいかに戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのかを古沢良太さんの脚本で巧みに描くNHK大河ドラマ『どうする家康』(総合、日曜午後8時ほか)。第9話では“イカサマ師”本多正信(松山ケンイチさん)率いる一向宗側との戦いを続ける中、身近な家臣さえ信じられなくなった家康。対して、鳥居忠吉(イッセー尾形さん)から「裏切られても信じきるか、疑いがある者を斬り捨てるかだ」と問われた家康は決意を固めて――といった話が展開しました。

一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるあのシーンをプレイバック、解説するのが本連載。第28回は「タテとヨコの関係」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

「不入」について

『どうする家康』、家康にとって苦々しい経験となる、三河一向一揆編が完結しました。

この三河一向一揆編、ドラマ内で「不入」という言葉がしばしば使われました。これは、守護の権力、武家の権力が手出しのできない土地、という意味です。

「一向宗から年貢を回収できないのは、その所有地に不入の権が設定されているから」という状況に対し、家康が「それはいったい誰が認めたのか」と疑問を抱きました。すると、家臣たちからは「今川義元が認め、殿の父である広忠殿がそれに倣ったからだ」という反応が戻ってきたように記憶しています。

この家臣たちの認識が正しいのならば、もともとは現地の大名である今川家が認めたのですから、同じく現地の大名となった松平家がそれを否定しても論理的にはおかしくないはずです。京都の足利将軍家や天皇家が認めた、ということになると話は別ですが。