植野 先ほど留美子さんが「入院慣れしている」と言っていたように、師匠はこれまで何度も入院してきましたよね。最初の大病は58歳のとき。初期の大腸がんでした。夏休みの時期で仕事に影響がなかったからメディアには公表しませんでしたが。

 あのときは、久しぶりに夫婦で人間ドックを受けたんですよ。そしたらポリープがみつかって、検査をしたら大腸がんだとわかったの。

植野 手術で全摘できて、10日ほどで退院したんですよね。

 確か退院直後の仕事先が神宮外苑の花火大会で。病院から直接神宮に行って、それから自宅に帰ってきた覚えがあります。

植野 まだ術後の痛みが残っていて、その後の札幌公演の楽屋でも、「痛い痛い」と横になっていることが多かったです。

 ほかにも肺がんになったり、脳腫瘍になったり、病気を繰り返していましたが、わりとすぐに仕事に復帰するので、いわゆる闘病生活というのは最後の1年間だけだったように思います。

植野 脳腫瘍で入院していたときも、病院から国立演芸場に通っていましたね。

 そうそう。働くのが好きで、しゃべるのが好きで。

植野 私には「休ませろ」とおっしゃるんですよ。そのくせ、仕事が入るといつもうれしそうでした。年齢を重ねてからは、体力的なこともあるので月に何日かは必ず休みを入れるようにしていたんですが、仕事が入っていないと不安になるところもあって。その塩梅が難しい人でした。(笑)

 夏休みと、クリスマスから大晦日にかけてはいつも長いお休みにして、家族でよくハワイに行きました。そうじゃないと、たいていゴルフに行っちゃうんです。

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