「死ぬ前にメロンが食べたい」

そのころ緩和ケア病棟に、「死ぬ前にメロンが食べたい」と言う患者さんがいました。そこで、ぜいたくだけどメロンを買って、メロンパーティをやろうかという話になりました。

ユキオさんの2万円が一役買ったのです。

『60歳からの「忘れる力」』(著:鎌田實/幻冬舎)

「メロンを食いたい」とうわ言のように言っていた患者さんが、夢がかなって、最高の笑顔を見せました。それを見たユキオさんも最高の笑顔。

はたから見れば、彼の人生は幸せとは言いがたいものでした。けれど、本人はどんな状況でも「なんとかなるさ」と楽観していました。

楽観力って、幸せになるためのジョーカーみたいなものです。ネガティブな札をすべてポジティブな札に変えて、彼は人生を締めくくりました。