新しいカスパーが生まれたと言われたい
自分が大きなアドバンテージを得ていることはわかっています。その一方で相変わらず重圧もありますし。役者の家に生まれたことのメリットとデメリットは半々でしょうか。そこは誰の人生もいいこともあれば悪いこともあるよね、みたいな感覚でとらえているんですが。それに誰かにこの複雑な気持ちをわかって欲しいというわけでもないし。なので淡々とやってます。
僕が役者の道を選んだことを父がどう思っているのかはわかりません。父(俳優の佐藤浩市さん)が三國(祖父の三國連太郎さん)に「役者になろうと思う」と告げた時、三國は「ああ、そう」と言っただけだったというのですが、僕が父に「役者になろうと思う」と伝えた時も、父は「ああ、そう」って、それだけでした。口の重い人達なので。(笑)
父は僕が10代の頃は凄く怖くて、近づきがたい存在でした。役者としてのアドバイスをうけたこともありません。でも最近はずいぶんと丸くなっていて、今回、舞台の話が来たと伝えた時は「おまえ、やるの?」って。驚いていたのが面白かった(笑)。三國は一回だけ、父は一回も舞台に出ていないので、意外だったのかもしれませんね。なんとなくなんですが、ちょっとモチベーションがあがりました。
静かな口調ではあるが、舞台という新しい挑戦に立ち向かう覚悟と心意気が伝わってくる。最後に「カスパー」の見どころについて尋ねてみた。
僕自身、ダンサーの首藤康之さんをはじめとする表現のスペシャリストの方々との共演にワクワクしていて。エンターテインメントの醍醐味を味わっていただけたら嬉しいです。難解な印象を受けてしまいがちな舞台なのですが、そんなことはなくて、スッと世界観に入っていける作品だと思います。ですから気構えることなく観ていただければ。史実のカスパーとは違う、新しいカスパーが生まれたと言われたい、なんて野望はあるのですが、本当にこれが最初で最後の舞台になるかもしれません。つまりそのくらいの意気込みで挑みますので、劇場へ足を運んでいただけたら嬉しいです。