「すみれコードギリギリ」のシーン
もう私は「すみれコード」で守られないのです。
年齢は勝手に公表されるし、質問の答えも、おもしろい切り返しが必要だし、
なんならオチのある話の一つもしなくてはいけません。
年相応の知識と教養と常識を持って、社会に対応していかなくてはいけないのです。
退団した頃は、そんないろんなカルチャーショックがありました。
早稲田大学の学生さんから質問されたのは、
「清く正しく美しく」に相応しくないと思われるもの、
すなわち「すみれコードギリギリ」と言われるものをどう演じているのか、
「清く正しく美しく」の定義の質問でした。
非人道的な悪い人物を演じることが多かった私にも、
ラブシーンというものが回ってきたことがありました。
今までも、数多くの妻や愛人がいましたが、ラブシーンはなかなかなかありませんでした。
回ってきた初めての本格的なラブシーンの相手は、どういうわけか男役でした。
「清く正しく美しく」の宝塚で、なかなか書かれる事は少ない男同士のラブシーン。
まさに「すみれコードギリギリ」のシーンでした。
私は与えられたものに対して疑問が生まれることもなく、
求められているものを、すんなりと受け入れます。
どんなシーンでも、宝塚らしさを逸脱することなく、求められた役を演じ、
決して生々しくしないのが宝塚です。
ただ、やはり客席はざわざわしていましたが、
そんなざわざわは大好きです。