「闇営業問題」
2019年に世間をお騒がせした「闇営業問題」です。
事件が発覚したその日、僕は吉本の本社に呼び出されましたが、何が問題なのか、最初は全然分かっていませんでした。
会社を通さずに受けた仕事は、今でこそ「闇営業」と呼ばれていますが、僕らは「直営業」と言ってました。
ごくたまに仲間の芸人から「どこどこのパーティでちょっと余興してきて」と頼まれたら、普通に引き受けていたのです。
個人的にバイトしているのと一緒、という感覚だったからです。
ところが、呼ばれた先に反社の人がいたのです。もちろん、僕たちはそんなことは知りません。知ってたら当然、行きませんでした。
でも、行ってしまった以上、知らなかったでは済まされない。そのことは、あとになるほど分かってきました。
その日から、テレビのワイドショーは闇営業問題一色になりました。僕は恥ずかしくて自分を直視できず、テレビを見ないようにしていました。
すると、嫁がそれに腹を立てて、「もっと自分と向き合え」と言って、ワイドショーの録画をこれでもかと僕に見せたのです。
ほぼ全てのワイドショーの録画を見せられたんじゃないかと思います。
番組では、上半身裸の僕が千円札をくっつけて作った首飾り(ハワイのレイのようなもの)をかけているたった1枚の写真を、上から横から斜めから下からなめるように何度も映していました。
現場の「絵」がそれしかないからです。醜態(しゅうたい)をさらした自分の姿を見るのは、正直かなりキツかった。
だけど、見るしかありません。
それは他の誰でもない、僕の真実の姿です。
「映像が残ってるし、全国に流れて、もうどこにも逃げ場はないよ」「自分と向き合って反省するしかないでしょ」と嫁に言われて、返す言葉もありませんでした。