曽野さんは、一人暮らしについて「人間にとっては群れで暮らす体制の方が異常だ」と言いますが――(写真提供:Photo AC)
親からの独立、離婚、配偶者との死別など…長い人生、いつかは一人になることを考えて不安に思う人も多いのではないでしょうか。「人間は誰も中年、老年、それぞれの年代において一人になる可能性がある。それに備えることは実に重大な任務だ。」と話すのは、作家、曽野綾子さん。夫、三浦朱門さんが亡くなってからはじまった一人暮らし。曽野さんは、一人暮らしについて「人間にとっては群れで暮らす体制の方が異常だ」と言いますが――。

一人に備える

別に男性、女性の差はない。

人間は誰も中年、老年、それぞれの年代において一人になる可能性がある。それに備えることは実に重大な任務だ。

備えねばならないのは、経済と心と、二つの面である。一人暮らしの新生活を用意するには、なにがしかの出費も要る。

だから、主に老後に備える貯金も必要なのだ。

しかし心の部分の方がもっと難しい。

家族の人数が減るか、自分一人になる状態を受け入れることは、心を裂かれ血を流すほど厳しいことだが、多くの場合、それは人間の務めなのである。

なぜなら生きるというのは変化そのものだからだ。